久しぶりのデート

久しぶりにゆ〜っくりとした日々を送った。
普段は俳句三昧なのだが月末の一週間は全く句会がないので、もし何も予定が入らなかったら日帰りで京都にでも行こうかななんて思っていたのだが、そう思うと不思議なもので次々と予定が埋まっていき、結局京都へは行けなかった。


《 その中の一日目 》

その日は久しぶりに高校時代からの友人J子さんとお出かけした。
J子さんはここ数年、なにかちょっとおかしい、J子さんらしくない、なんなんだろう?・・・と、いつも私を悩ませていた。
あんなに聡明で控え目で美しく、五十年の途切れることのない長い月日を一度もいやな思いをしたことはなく、友情は揺らぐことなく育まれてきた筈なのに・・・
最初は驚きとわけもわからない不安と、どう対応していいかわからない焦燥感に、時にはイライラさせられることもよくあった。でも、最近はやっと「もうJ子さんは今までのJ子さんではないのだ。今のJ子さんがJ子さんなのだ」ということを受け入れられるようになってきた。
そう思うと、自分を卑屈に思ったり、小さなことをグチグチ言ったり、自分で判断できずに私を頼りきったりすることも、やさしい気持で受け止められるようになってきた。
こうなれるまでにはずいぶん時間がかかったような気がする。


そんなJ子さんとその日はデパートで一緒に買い物をする約束をした。
まず最初は地下の食料品売り場から始まった。J子さんが人にものを送るのと、私も孫達へクリスマスのチョコレートを選んだり手みやげのお菓子の調達をする予定。
カステラ売り場でJ子さんに、「ここで送って済んだらモロゾフのところへ来てね」と言い、私は毎年選ぶ本の形をしたチョコレートや、クッキーとの詰め合わせなど買っていた。
カステラを送り終わったJ子さんも来て、「うわ〜、かわいい」と、彼女もお孫ちゃん用にいくつかチョコレートを買った。
「あとはもう買うものない?」と言うと、「ちょっと疲れたから休憩したい」と言う。
「じゃあ、あそこへ行かない?ケーキがおいしそう」
すぐ近くにあったお店に入ってお茶とケーキで一休み。
今日のJ子さんは調子がよく楽しそう・・・・♪
これならなんの心配もないJ子さんだ。
ケーキを食べながらいろんな話もした。いつもなら、ぽんぽん話が飛んでまともな話にならないのだが、その日は一つの話をそれほど飛ぶこともなく話すことができた。
私もなんとなく以前のJ子さんと話していた時のような楽しさを感じていた。


お茶が終わったら、本日のメーンイベントであるハンカチ売り場へ行く。
以前はよくお揃いのハンカチを持ったりプレゼントし合ったりしていたのだが、今日はJ子さんが私にお揃いのハンカチをプレゼントをしてくれると言うのだ。
「大判でスカーフのように首に巻けるのにしようね」と言い、二人で似合いそうなのを探した。
あれやこれや首に巻いたりしながら、二人共に似合った一枚のハンカチを選んだ。
「本当にいただいていいの?」と言う私に、J子さんは「こんなのではすまないのだけど。いつも本当にありがとうね」と言う。「何もお礼を言われることなんてしてないよ」「してくれてるよ」・・・・・


そんなこんな言いながら、今度はお財布売り場に行く。
以前からJ子さんが財布を欲しがっていたのと、私もいいのがあったら買ってもいいなと思って・・・
たくさんの財布の中でちょっといいのがありそれを手に取って見ていると、J子さんが「あ、それがいい」と言う。
「これ、いいよね。でも、もうちょっと探してみよ」と一回り見てみたが、やっぱり私が手に取ったものが一番よかった。
「やっぱりこれがいいね。私も気に入ったから、同じのがあったら財布もお揃いで買おうか?」と、私は店員さんに聞いてみた。すると在庫はなく来年早々に閉店になることが決まっているデパートなので、もう入荷予定はないのだと言う。
こうなると先に言ったもの勝ちだ。その財布はJ子さんのものになった。
まぁ、私のは又探せばいいや・・・ でも、ちょっと残念!


その後は、8Fのロフトへカードを見に行った。娘の誕生祝のカードと孫へのクリスマスカードなどなど・・・
たいした買い物ではなかったけど、こまごました気に入ったものを買うのってやっぱり楽しい♪
でも、でも、それより何より、今日のJ子さんがとっても楽しそうでいたって普通で、一緒にいる私はそれが何よりうれしかった。
「俳句抜きで会うのは久しぶりだったね。時々はまたデートしてね」とJ子さん。
「私も久しぶりにの〜んびりできたわ。またデートしよ、しよ」と私。
当に、またこんな時間を時々持ちたいな〜と思った。